「よし、もう仕事は無いぞ!!」
「はい、お疲れさまでした。休憩室へどうぞ」

 アルバは若干苦笑いで、書類を整理しながら俺に言った。
 なんだかうまく丸め込まれた気がしないでもないが、これも全てカナデとゆっくりする為だ。
 浮足立って休憩室へ向かい、ノックをするとカナデの声が返ってくる。

「すまない、カナデ。待たせてしまった」
「お疲れさまでした。思っていたより早く終わったんですね」
「君の事を想えば、筆の早さも三倍速だ」
「ええ?」

 俺がそう言うと、カナデは少し困ったように笑った。可愛い。
 ソファに座り、愛らしいカナデを見つめていると、アルバが茶と菓子を運んでくる。
 今日は紅茶と苺のシフォンケーキのようだが……アルバがティーセット一式をテーブルに置いてから、カナデに何か耳打ちした。
 するとカナデは「えっ」と小さく呟く。何を言ったんだ。

「イグニ様、カナデ様がご褒美をくださいますよ」
「なに?」

 カナデは少し照れながら、シフォンケーキを一口サイズに切り、フォークに刺した。そして……。

「えと、イグニ様……あーん、してください」
「あ……!?」

 俺は嬉しさと幸福感が同時に爆発し、思考停止しかけた。
 カナデに食べさせてもらえるだと……!?
 ちょっと上目遣いでピンクのケーキを差しだしてくるカナデが、むっちゃ可愛いんだが!!
 しかも照れているのか、少し顔を赤らめているところなんて愛おしすぎるだろ!!

「……イグニ様ー? 食べないなら、俺が貰いますよー?」
「絶対にやらん!!」

 アルバの一言で我に返り、カナデが差し出していたケーキを口に入れた。
 いつものパティシエが作ってくれているケーキのはずなのに、極上の味がするのは何故だろうか。
 その後も俺の分のケーキをカナデに食べさせてもらい、俺史上最高のティータイムとなった。


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